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作品名;  沖縄県民斯ク戦ヘリ
ー大田海軍中将一家の昭和史ー
著  者;  田村 洋三 発行社;  講談社

  昭和20年6月6日20時16分 海軍次官あて発出された大田司令官の”沖縄県民斯ク戦ヘリ”という人間味溢れた文章は世界の戦史にも例がない不朽の電報といわれる。
 大田海軍中将とそのご家族の当時の状況を読んで行くうちに、大田中将の文・武・仁の人間性がよく理解でき、あの電報が発出された背景が納得できる。
  大田中将はかつ夫人との間に11人のお子さまがおられ、11人すべて健在でいらっしゃる。かつ夫人が私の職場の大先輩労働省婦人少年局長谷野せつ氏の妹さんでいらっしゃったのも興味をひいた。
  目をつむれば沖縄県豊見城村の高台にある海軍司令壕が浮かんでくる。八重山民謡「月ぬ美しゃ(かいしゃ)」のメロディーがスローテンポで聞こえてき、何とも暗然とした気持ちになってくる。
 痛ましい犠牲者をだした沖縄にとても観光などに行く気になれないという人もおられる。でも多くの人に、明るい太陽が輝き、青い海を見下ろす沖縄・摩文仁の丘に立って欲しい。そして沖縄県民への特別の配慮を訴えた大田中将の「特別のご高配」によって沖縄が本当に平和で豊かな島になるように祈って欲しい。
  
海軍次官あて発せられた電報
 沖縄島ニ敵攻略ヲ開始以来陸海軍方面防衛戦闘ニ専念シ県民ニ関シテハ殆ド顧ミルニ暇(いとま)ナカリキ。然(しか)レドモ本職ノ知レル範囲ニ於テハ、県民ハ青壮年ノ全部ヲ防衛召集ニ捧ゲ、残ル老婦女子ノミガ相次グ報爆撃ニ家屋ト財産ノ全部ヲ焼却セラレ、僅(わずか)ニ身ヲ以ッテ軍ノ作戦ニ差支ナキ場所ノ小防空壕ニ避難。尚砲爆撃下風雨ニ曝サレツツ、乏シキ生活ニ甘ンジアリタリ。而(しか)モ若キ婦人ハ率先軍ニ身ヲ捧ゲ看護婦、烹炊婦ハモトヨリ砲弾運ビ挺身斬込隊スラ申出ルモノアリ。     略       陸海軍沖縄ニ進駐以来終始一貫、勤労奉仕、物資節約ヲ強要セラレツツ只管(ひたすら)日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ
・・・・沖縄島ハ一木一草焦土ト化セン。糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ。沖縄県民斯ク戦へり。県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ワランコトヲ。                                                                                          

 
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